人気ブログランキング |

前払い、後払い

 そういう巡り合わせの人生なのだろう、今までの人生の中で、路線バスに乗る機会が多くはない人生を送ってきた。もちろん、乗ったことが無いわけではないのだが、乗るとしても数か月に1回というようなレベルで、鉄道に比べると大幅に少ない。故郷では新交通や路面電車、上京後は地下鉄に(もはや死語だがあえて)E電に乗ることは日常なのだが、バスといえば歩道からその姿を見るばかりな気がする。そんな生活だが、ここ1週間、特異的に路線バスに乗る機会が多かった。

 路線バスばかりではなく、路面電車もそうなのだが、車内で硬貨を直接運賃箱に入れることが多い。もっとも、私が生まれたころには磁気式のバスカードが普及していたし、ICカードも普及して久しい。私も硬貨で運賃を払う機会は滅多にないといってよいが、相変わらず運賃箱という物体が消えることは無い。そんな運賃と切っても切り離せないのが”前払い・後払い”問題だろう。故郷、広島では後払い、すなわち降りるときに運賃を支払うのが一般的で、たとえ均一運賃であっても前払いというのは聞いたことがない。一方、上京してみると前払いも後払いも入り混じっていて、バス停や電停で真っ先にそれを確認する癖がついてしまった。昨日、今日と神奈川県内でバスに乗ったのだが、昨日は前払い、今日は車内整理券・後払いと、初めて来た人は混乱してしまうだろう。私はすっかり後払い文化が身についていて、整理券を取って車内運賃表を確認、運賃箱に丁度の金額を投入、と最早無意識のうちにできる作法といった感じだが、前払いでは未だに少し不慣れな感じがする。逆の立場の人もまた然りだろう。

 ”前払い・後払い”問題、やはり幼少期に慣れ親しんだものが所作として身に沁みついているようで、色々なエピソードを聞く。前払い文化に慣れ親しんできたという大学の先輩は、「後払いは無賃乗車しているようで、乗っている間はなんとも落ち着かない」と仰っていた。確かに、列車に乗るにしても、船に乗るにしても、切符を先に買って改札を通ってから乗車船するのが一般的だろうし、先に清算を済ませていないと落ち着かないという気持ちは分からなくもない。近年、地方のローカル線でも後払いの車内清算方式が増えていると聞くが、乗る立場からすると、それは少数派だろう。一方で、後払い文化に慣れてきた同郷の友人の間でよく聞くのは、前払いのバスに中扉から間違えて乗ろうとして運転手に咎められたという話である。前払いと知らなかった当人の調査不足を責めるのは少々酷な気もするが、運転手の側も不正と区別がつかないのだから咎めざるを得ない。前払い、後払いと2つの方式が存在する以上は避けられない悲劇だろう。

 そういえば、前払いなら均一運賃と相場が決まっているのだろうと思っていたのだが、かつて前払いで区間運賃のバスに出くわしたことが一度だけある。乗る時に運転手に降りるバス停名を告げ、その分の運賃を支払うという方式であった。運転手は全員の降車バス停を覚えられるものでもないだろうし、運賃を取りっぱぐれることも多そうな気がするが。そして何よりも、街を見ながら気まぐれにバスを降りて散策を・・・なんていうこともできない。まあ、そんなバスの乗り方をする旅人も滅多に居ないだろうが。一度やってみたいと思いつつも機会なく、時間だけが過ぎている。

by Agotetsu | 2019-09-12 18:28 | 随筆っぽいもの

ふところがみにかきちらし。日々浮かんでくる由無事をネットの海に垂れ流したいという欲求から生まれた何か。中の人はある同人サークルで編集担当をしています。


by Agotetsu
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30